研究員のひとりごと

東京自治研究センター研究員のブログ

熊本地震から2か月 南阿蘇村の前田信一さんからのレポート

 

 4月14日から震度7地震が連続して発生し、5月19日には震度1以上の有感地震が1500回に達した熊本地震。長引く避難生活と余震の連続で、被災者の精神的なストレス障害、不眠やうつ病、不安に耐え切れない子ども達など、これからの支援のあり方が問われています。

 東京自治研究センターでは、熊本県阿蘇村の前田さん(元都庁職員)からの被災地レポートをお届けします。前田さんは都庁福祉保健局(旧民生局)時代の経験に踏まえ、南阿蘇の豊かな自然環境の中で子どもの居場所づくりや自立支援の拠点として「しんの里」づくりを進めている中で被災しました。

 現在、地震の後の豪雨などで立ち入り禁止区域などある厳しい生活環境の中で再建を目指しています。

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2016年4月熊本地震、そして集中豪雨

―子どもたちの支援を始めます―

2016年6月 前田信一

 

≪はじめに≫

 熊本地震は2016年4月14日21時26分の前震が発生し、16日1時25分に本震があり、現在も大きな地震発生の恐れがあり、収束していない状況です。今回の地震被害は、死亡49人、関連死疑い20人で住宅の被害が13万4875棟となっています。

 私は14日南阿蘇村にある就労継続支援A型事業所「すまいるれーく」の仕事が終わり、近くのウイナスという温泉に入っているときに前震がありました。風呂の水がポチャポチャゆれておかしいなと思って上がったら震度7地震ということが分かりました。特に大きな被害もないので事業所は、15日は開けました。

 東京での仕事があり、朝空港に行ったら欠航で次の便に乗れ、東京に着いてその日の夜中に本震の報道がされ、事業所近くの阿蘇大橋が崩落したとの報告が繰り返し流されていました。

仕事が終わり飛行機も飛ぶようになり、19日に熊本に戻りました。

事業所の近くは立ち入り禁止地区となり気がかりでしたが動けません。

 15名の利用者(精神的疾患6名、知的障

がい5名、身体障がい1名、高次機能障がい2名、難病1名)に当面休みという連絡をし、避難していました。

≪南阿蘇

 南阿蘇村は阿蘇山の南側に位置し、阿蘇5山と外輪山に挟まれた緑豊かな静かなところです。人口は11,458人(外国人45人)、世帯数は4,687世帯となっており、老人人口比率が30%を超え、高齢化の進展が顕著となっています。主要産業は農林業と観光です。阿蘇地域は県内でも観光訪問者数の多いところです。年間1,600万人以上の人々が訪れています。(南阿蘇鉄道沿線は年間10万人利用)

≪県民すべての人がPTSD心的外傷後ストレス障害)≫

 一週間がたち、事業所に立ち入ることができるようになり南阿蘇に行きました。村の家々が倒壊し、自動車が横倒しとなり、阿蘇大橋が崩落している状況と、事業所が傾き、内部は散乱している状況を見て唖然としました。この場で(阿蘇地域で)再開していくことは無理だと実感しました。

 余震はおさまることなく、現在まで1600回を超えています。学校や職場の方も活動を始めました。私の方は5月31日で震災のために離職となりました。

 震災直後避難していて仕事もなくなり、心の疲れで体調不良となりました。被災者のすべてが強いストレスを抱えていることになりました。大人も子どもも老若男女すべての人が心と体に変化がきていると思います。

 ≪子どもの支援をはじめます≫

 私自身も避難をしていて、それまでの日常が大きく変化して、余震を感じながら何もする気にならず日々を過ごしていました。フェイスブックにその気持ちを出した時に、「PTSDだよ」とコメントをもらい、自分は何をすべきか?何ができるのかを考えてしまいました。「そうだ、自分にできることをやろう」と決めて、南阿蘇村でWRRという馬牧場をやっている三浦さんに連絡を取り、会って話をして『ホースセラピー、遊び場、語り場、キャンプをやろう。南阿蘇村で!!』を決めました。その後も仲間を集め、会議を行い、『南阿蘇・馬とASOぼう隊』というNPO法人を目指し、子ども達が同世代と一緒に遊べる場づくりをしていき、居場所をつくり、遊びをとおしてストレスを発散し、安心感を与えられ、大人の見守りの中でリラックスできる場を目指したい。地域でくらす、保育園、小学校、中学校生を招待し、乗馬をしてもらい、馬とふれあい、遊んでもらいたいと思っています。

 ≪心のケアを≫

 子どもの心の問題は見過ごされる可能性が高いです。5月31日の熊本日日新聞によると、心のケアが必要な子どもたちが3600人いるそうです。南阿蘇地域でも小中学生が約106名いるそうです。(保育園、小・中学生は約1000人)

 心の傷を受けた子どもたち、被災したばかりのこの時期に適切な対処が、家庭、学校、地域で継続的に必要になっています。

 我慢して気持ちを出さない、出せない子どもたち、無理に笑顔を見せようとする子どもたち、時間がたってから心のダメージPTSD・心的外傷後のストレス障害につながらないように、南阿蘇村から7月23・24日オープンを目指して活動しています。

 皆様のご支援をよろしくお願いします。

 

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以上、前田さんからのレポートを原文のまま掲載しました。