研究員のひとりごと

東京自治研究センター研究員のブログ

脱原発と都知事選挙

脱原発と都知事選挙

 

 1月23日告示、2月9日投・開票の東京都知事選挙の主要な候補者がそろったようです。都知事選挙は巨大都市東京の様々な行政課題とともに、日本の首都としての東京のあり方も問われる二元的な要素が絡み合い、都民の選択というかたちをとりながら日本全体の政治や社会に大きく影響する政治選択です。

 その意味で「東京は日本のエンジン」「東京が元気になれば日本を救える」「東京を世界一企業活動がしやすい都市にする」といった一元的な物差しは、本質的な課題を隠し、一過性のアイデア競争にしかならない危険があると感じていました。現に、石原都政とそれに続く猪瀬前知事は、本質隠しの中で誕生し、当の本人が勝手に投げ出したり「不祥事」を起こしたりで、国政と一体化した東京集中政策のひずみや地方との格差構造など、まじめに考える余地さえも奪ってきました。

 

 そう考えると、前回に引き続き脱原発を掲げて立候補表明している前日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏に加え、細川元首相が小泉元首相と連携し「原発は国の存亡にかかわる問題」として脱原発の立場を明確にしながら立候補表明したことで、多少なりともまともな都知事選挙になった気がします。

 政府はこうした動きに、「エネルギー政策は国政課題」として逃げの姿勢をとっていますが、都知事選挙ではそうした逃げは通用しないでしょう。

なにしろ福島原発事故の責任は東京電力であり、経産省であり、政府与党であり、原子力ムラであり、そして何よりも福島や新潟、青森に原発を押し付け膨大なエネルギーを消費してきた東京にあるからです。

 

与党が支援する舛添要一厚労相は、自民党が政権から転落したあと新党を結成し「原発に依存しない社会を地域から構築する」と主張していたようですが、都知事選立候補にあたって原発問題は一切語らず、今のところダンマリを決め込んでいるようです。安倍政権は、エネルギー基本計画に「機関エネルギーとして原発再稼動」を明記し閣議決定しようとしています。一方、東京電力柏崎刈羽原発の再稼動を会社存続の至上命題としています。舛添さんはこうした動きにどう対処しようとするのでしょうか?オリンピックは2020年ですが、再稼動は今夏の課題です。

 

 ところで111日付け朝日新聞のオピニオンの紙面で、作家の矢作(やはぎ)俊彦氏は「(1964年の東京オリンピック)日本中の人とモノが濁流のように(東京に)集まり、それまで都市と農村の乖離であったものを、東京と『その他』の乖離に変えたとも言えるだろう。」と語っています。この話は、日本の「敗戦」、復興、国威発揚とオリンピックについて論じたものですが、ここでもう一つ考えなければならないことは、その舞台は「東京」でなければならないということです。大阪でも福岡でもなく東京だということです。

明治・大正期の富国強兵策、昭和初期の侵略政策の時代はもちろんですが、戦後約70年近い日本社会も東京集中政策を機軸に動いてきました。都知事選挙を前に、こうした現実を検証し、東京以外を「その他」とするような東京のあり方がいいのかどうか、エネルギー政策、原発問題の中から考えていくべきです。

間違っても「2020東京オリンピック成功のためには(『その他』、地方の)原発が必要」といった話にだけはならないような名候補者への都民の選択を願っています。